Menu top about gallery download zatta bbs link

貴婦人電報

貴婦人電報のバックナンバーです。

#001
え? 野村のことですか?
思い出せることなら何でもって言われても、特別仲が良かったわけでもないですし……
う〜ん……部活はブラスバンドでしたよ、たしか。
メガネかけてて、ノースリーブで……あと何だろ、けっこう色白だったかなぁ……
あ、そうだ。家で犬飼ってましたよ、チワワでしたっけ? ちっちゃいヤツ。普通は家の中で飼うようなやつね。何故かあいつん家じゃ首輪つないで外で飼ってて、それでいつだったかあいつの親父が酔っぱらって帰って来て首を……え? ノースリーブは間違い無いかって? ええ、ノースリーブでしたよ。無闇に肌寒そうだったんで、それはよく覚えてます。
それだけ聞けば十分? もう行く? そうですか……あの、じゃあ約束の………え!? こ、こんなにいいんですか!? へへ、なんか気味悪いなぁ……。あ、じゃあついでにノースリーブじゃない方の野村の話もしましょうか?



#002
君が神に召されて3日。ポッカリと穴の空いた心も吹きさらしのまま、僕はたった一人で街を彷徨っていた。

ふらりと立ち寄った思い出のカフェ。冬のテラスで飲むホットミルクは、世界に置き去りにされた僕を少しだけ慰めてくれた。

街路樹が風に揺れる様をぼんやりと眺めていると、視界の隅に人影が現れた。カウンターにいたマスターがいつの間にかテラスへ出て来ていたのだ。僕のテーブルの上には、オレンジタルトの乗った小さなプレートが置かれていた。

君の好きだったオレンジタルト……いや違う、これはダシ汁で煮たナルトだ。白い陶磁器のプレートに乗せられているのは、おでんのナルトだ。おでんのナルト……おでんにナルト……オデンニナルト……オレンジタルト、か。

「ウサギって、ツッコまれないと寂しくて死んじゃうんだよ」

君の声が聞こえた気がした。
何も言わず、ただ静かにうなずくマスター。
僕は頬をつたう涙も拭わずに、残ったミルクを全て口に含むと、青く、高く澄みきった空に向けて勢いよく吹き出した。
君のいるそこへ、届け、乳脂肪分!



#003
はい、その通りです。我々はイラクが核兵器を……え〜、核兵器を所有しているという証拠を……証拠を40点以上提示することが……できます。え〜、それらの証拠を……証拠は……アレ? わかんなくなっちゃったよ。証拠は……と、戸棚、戸棚の奥の方にしまってあります。シケっています。カビてはいません。シケるにとどまっています。サダム・フセイン。フセイン……え〜と、ヒゲ? ヒゲが……ヒゲを剃れ。フセインは。……査察! いま査察する人達って言った! え〜、査察団は明日から4日間に渡ってイラク南部の……あれ北部か? 北部の……北部の科学工場の……サ、サロンパス? サロンパスを厳重に監視します……かな? ……あ、もうCM入りました?



#004
「先輩……これ、ネジです。受け取ってください!」

頬を赤らめながら、ピンクのリボンを結んだタッピンネジを差し出すミチ子ちゃん。

「ありがとう、ミチ子ちゃん。ちょうど部屋のドアが外れかかってたんだよ」

その夜、俺はミチ子ちゃんから貰ったネジでドアの蝶番を直そうとした。しかし、ミチ子ちゃんのネジは山が潰れているうえにピッチが歪んでおり、どうにも俺のドライバーと噛み合わなかった。

「手作りか、フフ」

そそっかしいミチ子ちゃんが一生懸命ローリング加工している姿を想像すると、可笑しくて笑いが込み上げてきた。

ちなみに他の女の子からはチョコレートを貰った。



#005
「ねえねえ、携帯の“電波の届かない場所”とスポーツ中継の延長をしない“一部の地域”って、きっと同じ所だよ。それがどこなのか、昨日考えてみたの。沖縄よ。沖縄が怪しいと私思う。気候も良いしね」

カバンから沖縄の観光案内を取り出しながら、屈託のない笑顔で彼女。
ドーナツの穴を使った料理を出す店があると誘われ、2人で横浜へ行ったのが先週だ。

彼女の親友は「照れかくしだよ」と笑うが、僕は嬉しく感じる反面で未だに不安を拭いきれないでいる。



#006
今日は駅でミチ子ちゃんと待ち合わせ。
Suicaのポスターが貼られた柱に背中を預け、かれこれ30分ばかり待ち惚けていると、改札の向こうから息を切らせてミチ子ちゃんが現れた。

「すみません先輩! 忘れ物、取りに戻ってたら……」

彼女のそそっかしさは今に始まったことじゃない。忘れ物なんてしょっちゅうだし、この程度の遅刻は可愛いものだ。しかしながら彼女がその性格を如何なく発揮し、ブザーの警告音と共に改札のシャッターに頭部を強打したときには、さすがの僕も叫んだ。

「ミチ子ちゃん! 遠近法、遠近法!!」



#007
「こんなもの食べれない、ペッ!」

彼女が吐き出した鯛のお頭が、僕の足下に転がってこう言った。

「もう、たまりませんよもう、憎い、かわいい、少し憎い」

お頭の言葉を遮り、彼女の頬を音高く打ちすえる僕。パチィンと乾いた音が鳴り響き、彼女は地面をゴロゴロ転がって、やがて西の地平の彼方に消えた。
僕の頬をつたう一筋の涙。さようなら青春。さようならカブキロックス。

「ペストペスト、好きな菌ですキキキッ」

いつの間にか僕の背後に立っていた、悪魔の羽をはやしたカイゼル髭の紳士(身長104cm)が陽気に笑う。
僕は紳士の差し出した日本手拭いを受け取り、両手で広げてみた。そこには油性マジックで「テクノ曼珠沙華」と書かれていた。
再び紳士に視線をやると、そこにはもう誰もいなかった。
北風が「ごう」と吹き、頭上から紳士の声が聞こえた気がした。

「これ全部100円ですかー?」

8時間後、すっかり夜色になった東の彼方から彼女がゴロゴロ転がって来た。

「悪かった」と僕。
「丸かった」と彼女。

彼女を両手で抱き上げると、僕らは永遠の愛を誓いあった。
お頭はもう土に還っていた。



#008
オサマさんが観光ビザで働いていたことがバレたため、野村の提案により仲間内でお別れ会が行われることになった。
当日、会場に集まったのはオサマさんと俺だけだった。

オサマさんは数分前から部屋の隅にうずくまり、一心不乱にアッラーへ祈りを捧げている。特別な日だからというわけではなく、これは彼の日課だ。
人数分の紙コップとペットボトルの間をいたたまれない空気が漂い、異国の祈りが室内にこだまする。進退極まった俺が5年ぶりに泣きそうになったその時、携帯からメールの着信音が鳴り響いた。

-------------------------
題名 :(non title)
差出人:野村

FF X-2、どこまでいったー?
-------------------------

俺は携帯を床に叩きつけて破壊し、オサマさんの隣にうずくまって泣いた。



#009
大学2年の春、仲間達と4人でバンドを組むことになった。
僕は中学の頃からギターを練習しており、当然パート決めではギターを希望した。しかし、なんということだろう、4人のメンバーのうち実に3人までがギターに名乗りを挙げたのだ。
ちなみにこの時、残る1人はすんなりとドラムに決まった。デブだったからだ。

侃々諤々の議論の末、メンバー4人の共同出資でカプセルホテルを経営することになった。

今でも歌番組など見るにつけ、あの時一言ツッコんでいればと悔やんだりもするが、年商は40億だ。



#010
貴婦人童話 「サブリミナル桃太郎(前編)」

むかしむかし あるところに おじいさんとおばあさんがおりました。
ある日 おじいさんは山へしばかりに おばあさんは川へせんたくにいきました。

おばあさんが川でせんたくをしていると 川上から大きな桃が どんぶらこ どんぶらこ とながれてきました。コカコーラ。

「りっぱな桃じゃ。もってかえっておじいさんと食べましょう」
おばあさんは桃を家へもちかえりました。

その夜 2人が桃を食べようとすると 桃の中から1人のおとこのこがとびだしました。
おじいさんとおばあさんは その子を桃からうまれた“桃太郎”と名付け たいせつにそだてました。

コカコーラ。

やがて おおきくなった桃太郎はおじいさんとおばあさんに こう言いました。
「おにがしまへ行って わるいおにをたいじしてきます さわやかになるひととき」
「それはりっぱなことじゃ がんばりなさい桃太郎」
おじいさんはりっぱな じんばおり を おばあさんはおいしい きびだんご を 桃太郎のためにつくってやりました。

おにがしまへむかうとちゅう 桃太郎は いぬ さる きじ をおともにくわえました。
「きびだんごは はじけるおいしさですワン!」
「ウッキー! ポップコーンによくあいますね!」
「ケンケン! 赤いはんばいきが めじるしですケン!」

めざす おにがしまは すぐそこです。

<後編へ続く>



投票
投票してみる
投票
メルマガ読んでみる



前のページ| 戻る次のページ


TOPABOUTGALLERYDOWNLOADZATTAKIFUJINBBSLINK
Copyright (C)2006 STUDIO-KURA All Rights Reserved.
当サイト内の画像、文章などの無断使用、無断転載を禁止します。



Menu2