| #021 |
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爽やかな風が吹き抜ける、緑の丘陵。
寝そべって流れる雲を見上げていると、となりでクスクスと君の笑い声。
「ねえ、あれ見てよ。おかしいったらありゃあしない」
君が指差す小川のほとりでは、村長が落とし穴に首まではまってた。
助けを求める悲痛な叫びと、犯人への呪咀の言葉が、交互に風に乗って聞こえてくる。
「あの穴ねえ、昨日私がこさえたの。3時間もかかったわ」
君はすっくと立ち上がると、村長に向かって手を振りながら叫んだ。
「首だけ村長、首だけ村長、コロコロ転がりどちらまでー?」
僕らに気付いた村長は怒りを爆発させ、70歳とは思えないハイエンドアクションで穴から飛び出した。
我を忘れた人間は、限界すらも忘れてしまう。
君はといえばそんな村長に動じることもなく、僕の耳もとにしゃがみ込んで、悪戯っぽく囁いた。
「ウフフ、落とし穴だけじゃあないのよ。あすこからここまでの道に、地雷が埋めてあるわ。村長ったらきっと五体バラバラ。本当に首だけになって、集めて縫ったってくっつきゃあしないわ」
青い空に君の笑顔。村長の事を差し引いても、今日は良い日だ。
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| #022 |
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客室乗務員の、焦燥を押し殺したアナウンスが機内に響き渡る。
「お客様の中に、飛行機のお医者様はいらっしゃいませんか?」
よからぬ事態が発生していることは想像に難くない。
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| #023 |
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シロミちゃんとアカミちゃんは魚肉の国のお姫さまです。
人間の世界を見学するために、魔法の釣り舟に乗ってやって来ました。夜来ました。
魚肉の国は、日本海側のけっこう浅い所にあります。
どのくらいの魚が住んでいるかというと、人間の国のベネズエラと同じくらいです。
魚肉の国は、水の中にあるので雨が降りません。
だからシロミちゃんとアカミちゃんは、群馬に入ってすぐ雨が降ってきて凄い驚きました。
でも本当はエラ呼吸ができなくて、それどころじゃなかったでした。
今日のお話はここまで。お父さん作り話苦手なんだよ。
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| #024 |
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「いやぁでもね、相手の国籍がわからない時、『外人』て言い方は失礼だって言いますよね。『外国人』て言うべきだって。なのに、親しみを込めて“さん”付けするのに『外人さん』とは言っても『外国人さん』ってあんま言わないっしょ?」
まくしたてる野村の後ろ姿を眺めながら、つくづくコイツは凄い奴だと思った。
消費税分の24円をまけてもらうためだけに、野村は1時間に渡り店員と交渉を続けている。すでに話の内容は、てりたまハンバーグ定食とは何の関係も無くなっているようだ。
町の食堂ならいざ知らず、ファミレスで料金をまけてもらうのは難しいと思うのだが、まだまだあきらめる様子はない。
そろそろ警察を呼ばれてもおかしくないと感じた俺は、バイトの時間が迫っているのを言い訳にこの場を離れることにした。
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| #025 |
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おしえて!ぼくの町OPテーマ
「ぼくらの住む町」
爽やかな風 吹いている
さあ冒険にでかけよう
ぼくらの町の路地裏の
大人の事情を見にいこう
夜の町中うろつけば
昨日より増えた異邦人
円の為ならえんやこら
ビザは無くとも心は錦
おしえて ぼくの町
さがして ぼくの町
夢と打算と野良犬が
弱者を求めて駆け巡る
太陽さんさん輝いて
気持ちの良い日は冒険だ
ぼくらの住んでるこの町は
赤の他人でいっぱいさ
だから友達作るんだ
町に住む人全員の
住所にメアド TEL番が
ディスクに入って売られてる
おしえて ぼくの町
さがして ぼくの町
淀んで濁った暗がりで
金の成る木が狂い咲く
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| #026 |
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観測史上に残る猛暑に見舞われた夏休み初日。
僕達3人が学校のプールで遊んでいると、6年生の松本先輩がやって来た。
「オイお前ら、飛び込み台に並べよ。プロレス技かけてやる」
乱暴者の先輩に逆らえず、僕達は渋々コンクリート製の飛び込み台に立った。
「よし、お前にはブレーンバスターな」
「お前はパワーボムだ」
立て続けに上がる盛大な水しぶき。
2人をプールに放り投げた先輩が、喜色満面で僕の前へ立った。
「よ〜し、それじゃあお前にはポッソフドロップをかけてやる! 目ぇつむれよ」
ポッソフドロップ? いったい何をされるのか、名前からは想像もつかない。
覚悟を決めた僕は、歯を食いしばり固く目をつむった。
………。
しかし、先輩が何かする気配はいっこうに無い。
「あの、先輩。もういいですか? 目開けますよ……?」
返事は無い。
コンクリートの地熱と直射日光に炙られ、だんだんと体がグラついてくる。
………。
耐え切れずに目を開くと、先輩の姿はどこにも見当たらなかった。
プールサイドにも……。
水の中にも……。
ふと視線を落とすと、飛び込み台に立つ僕の足下に高さ3cm程の盛り塩がされていた。
・
翌年になり6年生が卒業していくまで、僕も友達もついに先輩の姿を見かけることは無かった。
そして僕らが卒業を迎える頃には、先輩の記憶はもうおぼろげなものになっていた。
ポッソフドロップが何だったのかは未だに解らない。
夏の暑い日に、たまに思い出す。
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| #027 |
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ハハハ、それジョン、取ってこーい!
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よーしよしよし、犬のくせにえらいぞジョン。
じゃあ今度はもっと遠くに投げるからね。取って来れるかな? それー!
「ちょ、ちょっと何するのマイケル!? やめなさいマイケル! 母さんの髪を掴んで引っ張るのはやめなさいやめろ! あ〜れ〜」
・
よーしよしよし、えらいぞジョン。
え? ご褒美が欲しいのかい? うす汚い野良犬め、大好物の白菜だよ。
そしたら今度は、も〜っと遠くに投げるよ。取って来れるものか!
「お坊っちゃま、おやめください! 私を筒の先に押し込んで点火するのはおやめください、私が敬語のうちにおやめください! あ〜れ〜」
・
よーしよしよし、えらいぞジョン。お遊びなのに必死だな。
お前は僕の誇りだよ。僕達いつでも一緒だぜ! 主従関係だ!
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| #028 |
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花子さんが泣きながら時速7kmで太郎君の部屋を飛び出しました。
太郎君は慌てて服を着て、時速Xkmで花子さんを追いかけました。
問1、太郎君は10分後に花子さんに追いつき、言い訳しました。
太郎君の時速Xにあてはまる数字を答えましょう。
問2、太郎君の部屋に残された幸子さんは、一服したあと服を着て、
時速3kmで20分かけて自宅に戻りました。
太郎君の部屋から幸子さんの家までの距離を求めましょう。
問3、太郎君と花子さんはこの状況を乗り越えられるでしょうか。
ただし、太郎君には前科があるものとします。
問4、再び幸子さんが太郎君の部屋に行く確率を答えましょう。
ただし、幸子さんは太郎君の部屋にライターを置いてきました
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| #029 |
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「おばあふゃん、ここいおおきいくぐあこきいさいくぐあがあいまふ。ぼぴあかえあんげ、おみやげいおもっかえいくばはい」
舌を切られたスズメの滑舌はあまりにも酷く、何と言っているのか理解できなかったいじわる婆さんは、つづらを持たずに帰ってしまいました。
その後ろ姿に向かって「チッ」と舌打ちをしようにもできないスズメは、己の無力さに涙するのでした。
ちなみに優しい爺さんはちょっとアレが進んでいたので、勝手につづらを持って帰りました。
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| #030 |
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世界中を旅していた20年前、私はジャングルの奥地でアボポ族という部族に出会ったんだ。
集落へ案内され、親睦を深めて三ヶ月。別れの日に、族長は身ぶり手ぶりでこう告げた。
「お前は我々の家族だ。アボポの掟に習い、家族の証にこれを持って行け」
こうして晴れの日を迎えたお前を見ると、あの頃が無性に懐かしく感じるよ。
母親がいないことで、お前には色々と迷惑を……え? いやお祝いムードの時にサラッと言っとかないと大変かなと思って……。
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