太陽が地平線に七分も身を隠したころ、僕は小さな街の小さな門の前に辿り着きました。
門の前には鈍色の兜をかぶった小さな門番が3人、先割れスプーンのような槍をかまえてちょこんと立っておりました。
僕が近付きますと、いっとう立派な角付き兜をかぶった門番がずいと前に出て言いました。
「えい怪しいやつ。いったいお前は何者か?」
後ろの2人も続きます。
「やれ何者か?」
「それ何者か?」
僕は名を名乗ったのですが、3人はどうにも訝しげな視線を投げかけるばかりです。
そこで、先程摘んだ小さな赤い花を懐から取り出し、3人の兜に一輪ずつちょこんとのせてやりました。そうしますと3人はたいへん喜んだようすで、肩を組んでおかしな踊りを始めたのです。なんだか嬉しいような切ないような気持ちになった僕は、3人の踊りにまじりました。
夕日に照らされて、僕ら4人の影は長く大きく東の地平まで届き、瞬きはじめた星々におかしな踊りを披露しました。
「お前はなかなか悪くない。今のうちに通れ」
「やれ通れ」
「それ通れ」
しばらく踊ったあと、3人の門番はそう言って道を開けてくれました。
そうして僕が門をくぐり、すっかり暗くなった街の中、石畳の上をてくてく歩き始めた所で背中の方からこんな声が聞こえました。
「日の変わらぬうちに婆様に挨拶を。旅の助けにもなろう。煙突2本、紫屋根の家だ。忘れるな」
「やれ忘れるな」
「それ忘れるな」
さっさと宿を取りたかった僕ですが、しかし婆様という人に挨拶をしておくことも必要だろうと思い、そうすることにしました。
小さな街は思ったよりずっと小さく、煙突2本の紫屋根はすぐそこにありました。
|